住宅ローンは繰り上げ返済するべき?私が見送った理由

節約・家計

「金利が上がるなら、早く返してしまった方がいいのでは?」
そう思ったこと、ありませんか。

2026年6月、日銀が政策金利を1.0%に引き上げました。
約31年ぶりの水準だそうです。

そのニュースを見たとき、私の頭にまっさきに浮かんだのは「住宅ローン、早く返さなきゃ」でした。

変動金利は、これからもじわじわ上がっていくかもしれない。
利息が増える前に、手元のお金で一気に返してしまいたい。
そう焦ったのです。

でも、一度立ち止まって計算してみると、見えてきたものがありました。

結論から言うと、私は「今は繰り上げ返済しない」を選びました。
理由はシンプルです。
住宅ローン控除が残っていて、繰り上げ返済による効果が小さいと判断したからです。

繰り上げ返済が悪い、という話ではありません。
ただ、自分の目的を考えたとき、答えが変わったのです。

この記事では、利上げで「早く返したい」と焦った私が、なぜ今は繰り上げ返済を見送ったのか。
その理由と、判断のときに見落としがちなポイントを、メリットとデメリットの両面から正直にお伝えします。

読者
読者

金利が上がるなら、貯金を使ってでも早く返した方が安心ですよね?

みずかめ
みずかめ

その”安心したい気持ち”の正体を、一度だけ確かめてみませんか。

こんな方に読んでほしい記事です

  • 利上げのニュースを見て「早く返さなきゃ」と焦っている方
  • 毎月返しているのに、元金が減っていない気がして不安な方
  • 繰り上げ返済と投資、どちらにお金を回すか迷っている方

「借金返済は最大の投資」は本当か?

「借金の返済は、最大の投資である」
そんな言葉を聞いたことがあるかもしれません。

これは、半分本当です。

繰り上げ返済をすると、その分の利息を払わずに済みます。
つまり「ローン金利と同じ利回りで、確実に増やした」のと同じ効果があるのです。

たとえば金利1%のローンを繰り上げ返済すれば、「年1%の確実な運用」をしたのと同じ。
値動きもなく、減る心配もありません。

これは繰り上げ返済の大きなメリットです。

ただ、ここに見落としがちな落とし穴があります。
それが住宅ローン控除です。

住宅ローン控除を受けている間は、年末のローン残高に応じて、税金の一部が戻ってきます。
契約した時期によって、残高の0.7%または1%が、その年の所得税などから差し引かれる仕組みです(戻る額は、納税額や家族構成などの条件によって変わります)。

ここが大事なポイントです。
控除を受けている間、ローンの「本当の負担」は、金利そのものではありません。

ローン金利(例:1%)− 住宅ローン控除(例:1%)= 実質の負担(ほぼ0%)

つまり、控除期間中のローンは「ほとんど利息がかからない借金」になっていることがあるのです。

このとき繰り上げ返済をしても、「ほぼ0%の運用」にしかなりません。
急いで返すうまみが、とても小さい。

これが、住宅ローン控除中の繰り上げ返済のデメリットです。

利上げで”元金が減らない”のは危険信号?

ここで、もう一つの不安に触れておきます。
「毎月ちゃんと返しているのに、元金がぜんぜん減っていない」という感覚です。
これは、変動金利の「5年ルール」という仕組みが関係していることがあります。

多くの変動金利型住宅ローンには、金利が上がっても毎月の返済額を5年間は変えない「5年ルール」があります。
ただし、すべての金融機関で採用されているわけではありません。
契約内容は、事前に確認しておきましょう。

返済額が同じまま金利だけ上がると、どうなるでしょうか。
返済額のうち、利息に回る分が増え、元金に回る分が減ります。

毎月の返済額うち利息うち元金
金利1%のとき8万円約1万7,000円約6万3,000円
金利2%に上がると8万円(同じ)約3万3,000円約4万7,000円

※残高2,000万円・毎月返済額8万円と仮定した一例です

返済額は変わらないのに、利息が増えた分だけ元金の減りが遅くなる。

「元金が減っていない」と感じるのは、このためです。

たしかに、不安になりますよね。
でも、ここで落ち着いて考えてみてください。

元金が本当に「1円も減らない」状態になるのは、利息が毎月の返済額を超えてしまったときだけです。
それには、金利がかなり大きく上がる必要があります。

今の金利水準(大手銀行で1%前後)では、まだそこには距離があります。
元金の減りが遅くなっているだけで、止まっているわけではないのです。

⚠️ 見落としがちな「団信」という保障

繰り上げ返済を考えるとき、多くの人が見落とす”保険”があります。
それが団信(団体信用生命保険)です。

住宅ローンには、契約者が亡くなったときに残りのローンがゼロになる保障がついていることがほとんどです。
これは、いわば「住宅ローンの残高ぶんの保障」を持っているのと同じこと。

たとえばローン残高が2,000万円なら、万一のときに2,000万円のローン返済が不要になる保障があるとも考えられます。

繰り上げ返済をして残高を減らすと、この保障も同時に小さくなります。
「早く返してスッキリ」した結果、もしものときの備えを自分で削っていた、ということも起こり得るのです。

(保険を”目的”から考える大切さは、▶ 関連:保険の入り方で後悔しないために|50万円損した私の実体験 でもお伝えしています)

私も「早く返したい」と思った。でも──

正直に言うと、私も利上げのニュースで「早く返してしまいたい」と強く思った一人です。
金利が上がる、と聞くだけで落ち着かなくなる。
借金が減らないことが、なんとなく気持ち悪い。

その感覚は、よく分かります。

でも、パソコンで返済シミュレーションを使って、ひとつずつ計算してみたんです。

繰り上げ返済で減らせる利息はいくらか。
そのとき失う控除はいくらか。
そして、同じお金を別の形で活かしたらどうなるか。

並べてみて気づいたのは、ひとつのことでした。

私が返したかったのは、お金の問題ではなく”不安”だったのです。

数字の上では、今の私にとって繰り上げ返済の効果は、とても小さいものでした。
それでも返したくなったのは、ただ「スッキリしたかった」から。

それ自体は、悪いことではありません。
むしろ「精神的な安心」は、立派な目的の一つです。

ただ私は、その安心のために大切なお金を動かすより、今は手元に残して別の選択肢に活かす方が、自分の豊かな人生に近いと感じました。

だから私は、今は繰り上げ返済を見送りました。
これは「正解」ではなく、「今の私の目的に合った選択」です。

では、繰り上げ返済が向いているのはどんな人?

ここまで「私はしない」と書いてきましたが、繰り上げ返済が向いている人ももちろんいます。
むしろ、次のような方には大きなメリットがあります。

こんな方繰り上げ返済が向いている理由
住宅ローン控除が終わっている(または残り期間が短い)方控除による戻りがないぶん、ローンの負担=金利そのもの。返した効果がそのまま利息の節約になります
しばらく使う予定のないお金があり、投資は考えていない方銀行に置いても増えにくいお金を、確実に金利ぶん節約できる「安全な置き場所」になります
定年までに完済して、老後の支出を減らしておきたい方「老後の安心」という目的がはっきりしている。返す意味が明確です
金利が上がり、ローン金利が見込める運用の利回りを上回ってきた方運用より返済の方が有利になり、繰り上げの効果が大きくなります

こうして見ると、ある共通点が見えてきます。
それは「目的がはっきりしている人ほど、繰り上げ返済は力を発揮する」ということです。

確認すべきは「何のために返すのか」

ここまで読んで、こう思った方もいるかもしれません。
「結局、返すのと返さないの、どっちがいいの?」と。

その答えは、人によって違います。
そして、それでいいのです。

確認すべきことは、たった一つ。

「何のために繰り上げ返済をするのか」という目的です。

利息を減らしたいのか。
借金がある状態が、精神的にいやなのか。
老後までに完済しておきたいのか。

目的がはっきりすれば、繰り上げ返済が自分に向いているかどうかは、自然と見えてきます。

繰り上げ返済も、投資も、手元に残すことも、すべては豊かな人生のための”手段”の一つにすぎません。
手段が目的になってしまうと、判断を間違えやすくなります。

「繰り上げ返済はしない方がいい」と聞いたことがある方もいるかもしれません。
でも、それも万人にあてはまる正解ではありません。

大切なのは、一般論ではなく、自分の目的に照らして考えることです。

繰り上げ返済を選ぶ人も、選ばない人も、どちらも正解です。

「なんとなく」で大きなお金を動かさないこと。
それだけで、後悔はぐっと減らせます。

(手元のお金を運用に回すという選択肢については、▶ 関連:初心者でも迷わない|NISAの始め方をやさしく解説【これだけでOK】 もあわせてご覧ください)

よくある質問

Q. そもそも「5年ルール」とは何ですか?

A. 変動金利が上がっても、5年間は毎月の返済額を変えない仕組みのことです。あわせて、6年目に返済額が上がるときも「それまでの1.25倍まで」とする「125%ルール」を設けている金融機関もあります。返済額が急に増えるのを防ぐ仕組みですが、その間に支払う利息そのものが減るわけではない点には注意が必要です。

Q. 住宅ローン控除中でも、繰り上げ返済した方がいいケースはありますか?

A. あります。ローン金利が控除率を上回っている場合や、控除期間が終わった後などは、繰り上げ返済を検討する価値があります。ご家庭の状況によって変わります。

Q. 繰り上げ返済とNISAなら、どちらを優先すべきですか?

A. 住宅ローン控除中で金利が低い場合は、NISAなどの運用を優先する考え方もあります。ただし投資には値動きがあるため、どちらが良いかはリスク許容度によって分かれます。

Q. 一部だけ繰り上げ返済するのはアリですか?

A. アリです。全額返すかゼロか、ではなく、手元資金を残しながら一部だけ返す方法もあります。返済期間を縮める「期間短縮型」と、毎月の返済額を下げる「返済額軽減型」があり、目的に合わせて選べます。

Q. 繰り上げ返済は少額でも意味がありますか?

A. あります。1万円や10万円でも、将来支払う利息を減らす効果があります。ただし住宅ローン控除中は効果が小さい場合もあるため、手数料や控除への影響も含めて判断するのがおすすめです。

Q. 筆者は住宅ローンを繰り上げ返済する予定ですか?

A. 今のところ予定していません。住宅ローン控除が残っていることや、手元資金とのバランスを考え、今は返済を急がない選択をしています。状況が変われば、考え方も変わると思います。

読者
読者

結局、繰り上げ返済はするべきなんでしょうか?

みずかめ
みずかめ

“何のために返すのか”が決まれば、あなたの正解は自然と見えてきますよ。

まとめ|繰り上げ返済を考える前に確認したいこと

  • 控除期間中は「金利 − 控除」で考える。実質の負担は、思ったより小さいことがある
  • 「元金が減らない」のは5年ルールのため。多くの場合、止まっているわけではない
  • 繰り上げ返済をすると、団信という”保険”も同時に小さくなる
  • 控除終了後や、使う予定のないお金がある人には、繰り上げ返済が向いている
  • いちばん大切なのは「何のために返すのか」という目的の言語化

利上げのニュースは、私たちを不安にさせます。
でも、その不安にまかせて動く前に、自分の目的を一度だけ確かめてみる。
それだけでも、お金にまつわる後悔を、少し減らせるはずです。

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